「はげましを受けて育った子は自信を持ちます」、「人に認めてもらえる中で育った子は
自分を大事にします」・・・。
NHKの「クローズアップ現代」(2005年3月末)で「親の心をつかんだ詩」として放送された
ドロシー・ロー・ノルトさんの詩。
僅か十数行の詩には、時代を超えて 子育ての本質と智慧が凝縮されているといえます。
財団法人北海道青少年育成協会ではかねてから和訳を広報資料に活用させていただいています。
今回、訳詩をされた吉永宏さんにこの詩との出会い、詩に寄せる想いなどについて寄稿していただきました。
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特別寄稿
創ろう 新しい「子育ての詩」
常盤大学コミュニティ振興学部教授 吉 永 宏
今、全国で短い詩が国民の大きな関心を集めています。去る、2月、皇太子さまがお誕生日に
際しての記者会見で、“つい最近、ある詩に出会いました。「ドロシー・ロー・ノルト」という
アメリカの家庭教育学者の作った「子ども」という詩です。”(読売新聞)と述べられたことが
きっかけになったのです。
実は、私は今から30年前にこの詩に出会っていました。その詩と私とのかかわりについて
知りたいとの問い合わせを北海道青少年育成協会からいただいたので、訳の経緯とその後の
広がりについて短く述べます。
このたび報道された詩は「子は親の鏡」というタイトルがつけられた19行ですが、
1953年にアメリカの教育学者のノルトさんが作詩し私が手にした初版とも言える
元の詩は12行でタイトルはついていませんでした。後にノルトさん自身が19行に書き改め、
その詩の日本語訳にあたって「子は親の鏡」というタイトルがつけられたようです。
その詩を私が手にしたのは知人夫婦がアメリカから帰ってきたとき、お土産として
私たちに贈ってくれた壁掛け(タペストリー)にこの詩が綴られていたからです。
私の妻と知人夫婦とでこの詩をめぐって子育てや教育についてよもやま話をしていましたが、
“日本語ではどのように表現できるのだろう”ということになり、
そのことが和訳に結びついていったのです。
訳にあたっては教育学や心理学などの専門用語をできるだけ避け、私たちが日常会話で
使っている言葉や表現とするよう心がけました。専門用語はなじみにくいと感じているからです。
したがって私の訳には権威的なところや教訓的なところがあまりないとされています。
普通のことを当たり前に表現したわけです。
その後、学校、PTA、公民館、研修会での講演や研修の機会に、子育てや教育について
考える手がかりとしてこの詩を提供してきました。延べ数百回もの機会に配ったことになります。
1979年2月、国連が提唱した「国際児童年」キャンペーンの一環として、
全国に支部を持つ青少年団体の機関紙の表紙にこの詩を掲載したこともあります。
ところが、1989年5月、日本放送の「玉置宏の笑顔で今日は」に、
この詩がとりあげられ広く行きわたりました。その後、ノルトさんが改定した詩と
彼女の著書が日本で出版され、この詩がさらに広く知られるようになったのです。
マスコミの力が大きいことを改めて気づかされました。
1953年に作られた12行詩の私の訳を次に掲げます。
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30年をふりかえるまでもなく家庭環境は大きく変化しました。
子どもたちの成長を支える視点からすると、今の社会環境はさまざまな
深刻な問題を抱えています。子育ての悩み、不安を抱いている両親が多く、
子育てにあたっての基本的な方向と考え方を探し求めています。
そのことがこの詩が広い関心を集めている背景だと考えます。
この詩を読みながら改めて考えさせられることがあります。
それは日本人がこれまで営々として築きあげてきた文化と歴史は普遍性を
持つ国民経験であり大事にしなければならないということです。
たしかにプラスばかりではなくマイナスの部分をも有する遺産ですが、
そうであったとしても、子育ての本質と智慧がそこに潜んでいることを見落としてはなりません。
その財産を次世代に伝え渡すことが私たちに求められている重要な課題です。
ノルトさんの詩を一つの示唆として受けとめ、現代日本人として21世紀の新しい
“子育て詩”を仲間と共に私たちの手で創ろうではありませんか。
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筆者プロフィール
吉 永 宏
よし なが ひろし
専門「青少年育成論」 「ボランティア・NPO論」。
子育てと青少年育成の視点から、地域におけるボランティア・
NPOの働きに強い関心を持ち地域での指導者育成に講師として指導。
青少年育成国民会議、県、市町村、社会福祉協議会などにおいて講演・研修にあたっている。
主著「響きあう市民たち−NPOとボランティア入門」新曜社
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