優秀賞
(北海道教育委員会教育長賞)




石狩支庁地区 当別町立西当別中学校 3年
萩原 有希はぎはら ゆ き

題 『兄の死を乗り越えて』

  私には三つ年上の兄がいました。兄はとても優しく、面白い人で、 私が小学生の時はいつも一緒に遊んでくれました。でも、私が小学校五年生の時、兄は自ら命を絶ちました。
  兄はとても正義感が強く、色々な人から好かれていました。 私はそんな兄を心から尊敬していました。兄は、私の相談もちゃんと聞いてくれました。 でも、私には何も相談をしてくれませんでした。私は兄が弱音を言っているのを一度も聞いたことがありません。 兄がなぜ自殺をしたのかは、私達家族にもわかりません。兄に何があったのか、兄が何を思っていたのか、 なぜ自分一人で抱え込んで誰にも相談しなかったのか、私は、いつもそんなことばかり考えていました。 そして、なぜ自分は兄の力になれなかったのかと、自分を責めたりもしました。 でも、考えても考えても答えは返ってきません。かわりに深い悲しみに襲われて、涙が溢れてきました。 家族一人がいなくなるだけで世界中が変わったような感じがして、とても辛くて、苦しくて、 言葉にできない感情が私の中をずっと駆け回っていました。それでも私は、人前では絶対に泣かないようにし、 いつも強がってばかりいました。そして同情されたくないがために、「兄ちゃんなんかどうでもいい」 「兄ちゃんのことなんかなんとも思っていない」などと、最悪なことばかり言ってしまいました。 でも、もう今までとは違う自分になりたい、そう思うようになりました。
  みなさん、もし自分の大切な人が自殺をしてしまったらどうなると思いますか? たぶんわからないと思います。ただ悲しいとか、ただ苦しいとかそんな問題じゃありません。 その人一人が死ぬ事で多くの人が深い悲しみに襲われ、人生そのものが変わってしまう事だってあるのです。 私たち一人一人の命は、実は世の中と深く関わっているのです。 世界には生きたくても生きることのできない人が沢山います。そういう人達は自殺のことをどう思うのでしょうか。 もし、今、自殺をしたいと思っている人がいるのなら、私はその人に言いたいのです。 自殺などするなと。どんな人間だって自分一人だけで生きているわけではないのです。 だからどんなに苦しいことがあっても、一人で抱え込まないで、必ず誰かに助けを求めてほしいのです。 苦しみからの逃げ道は決して自らの死ではないのです。命の重さをわかって下さい。
  私自身も、これからは兄の分も、この命を大切にし、親を大切にし、周囲の人を大切にし、 未来に希望を持って生きたいと思います。
  本当の意味で命を大切にするという事は、この与えられた一瞬一瞬を精一杯頑張り、 人の役に立つ生き方をするということではないでしょうか。 そうすれば、もしこの世に自分がいなくなって も、色々な人の心の中に生き続ける人になれるのではないでしょうか。 みなさんも、毎日精一杯努力をし、一歩一歩を確実に歩んで、良き人生を全うして下さい。 そして、死にたいと思う人がいなくなるような良き社会を作れるように共に力を合わせてみませんか。