胆振支庁地区 登別市立幌別中学校 3年
大家 佳子おおいえ よしこ

題 『みんな同じ』


  私の兄は障がい者です。情緒障がいがあります。
  兄は中学3年生の時、伊達市にある高等養護学校を受験しました。私達家族はみんな不安でした。例え合格できたとしても、兄は親元を離れ、寮で生活する事になります。情緒障がいのある兄は、人付き合いが上手ではありません。いきなり大声でしゃべり始めたり、ちょっとした事で、すぐパニックを起こしてしまいます。「お兄ちゃん、受験するんだよ、わかってる。」としつこく話しても、「ああ、ええっとねぇ、そういえばねぇ、今日は面白いテレビがあるんだよ。」などと言って、話をそらすだけでした。
  結局、兄は合格する事ができたのですが、私はやはり、これから始まる兄の寮生活が心配で、仕方ありませんでした。
  あれから約2年半が経ち、現在、兄は高等養護学校の3年生です。私達の心配をよそに、友達もたくさんできて、楽しく毎日を過ごしているようです。「お兄ちゃん、寮と家ならどっちがいい。」私の質問に対して兄は「ウーン、どっちもかなぁ。」と笑いながら答えました。
  私は幼い頃、障がいのある兄がいる事を、恥ずかしく思っていました。正直、2人で並んで歩く事さえ嫌でした。でも今では、兄の事を自慢に思います。兄は、私にないものをたくさん持っています。「明るい性格」、「屈託のない笑顔」、まるで人を疑う事を知らない、「純粋な心」です。兄がいるだけで、我が家はとても賑やかになります。次々と兄の口から出てくる楽しい話を聞いていると、なんだか私の方まで楽しくなるのです。
  そんな兄は、周りが驚く程の豊富な知識と、記憶力の持ち主でもあるのです。特に、好きなスポーツや、日本の地理に関する事では、抜群の記憶力を発揮します。ある夏の日の事、兄は高校野球を見ながら、一人言をしゃべっていました。「さあ、始まりました。甲子園。この試合は杉澤アナウンサーの実況でお伝えします。さて、今日対戦する長野県代表、松商学園がある松本市は、今年で市政施行、なんと百年を迎えるそうです。」このような事を本当のアナウンサーのように、何も見ないでスラスラと言えるのです。兄の凄まじい記憶力にびっくりした私は、しばらく、開いた口がふさがりませんでした。
  障がい者に対して、皆さんはどう思いますか。「何もできない、どうせガイジだろう。」などと思う人や、「かわいそう。」と思う人がきっといると思います。でも決して、そんな事はありません。「何もできない」「劣っている」「かわいそう」。いいえ。障がいのある人にも、皆さんと同じ心があります。ひとり一人異なる個性があります。障がい者も健常者も、みんな同じ、人間なのです。
  私が皆さんに伝えたい事、それは障がい者に対して偏見を持たず、同じ人間としてまっすぐに見てほしいという事です。
  確かに、能力的な面で劣る所はあるかもしれませんが、それは健常者とて同じ事です。優しさ、怒り、喜び、悲しみなど、人の持つ感情は同じ。ただ、その表現の仕方があまり上手くないだけの事なのです。
  もう一度お互いを見つめ直し、偏見のない世の中になってくれる事を心から願って、この主張を終わります。