題 『この手で、その手で』 |
「やっと工事終わったらしいよ! 夏にオープンだって!」 友達が僕にこう言ってきた。僕の住んでいる厚田は港町である。その厚田に先日、海浜プールが完成したのだ。以前から工事の様子は見ていた。中学生の僕が見ても客が入りそうなプールだな、と思う。 ある日、授業の一環で海浜プールに行く機会があった。プールに着くと、みんな一斉に海に走っていった。砂浜はきれいで、テトラポッドにより波は小さく、そこに吹く潮風が見事にマッチしていた。海浜プールには文句のつけようがなかった。 ところが、辺りを探索していると気になる所が出てきた。それは、プールの隅にある岸壁だ。岸壁は何かを知られまいとしているのか、プールとは明らかに違う雰囲気を漂わせていた。(ちょっと行ってみるか)軽い気持ちで岸壁を登り、乗り越えた僕は呆然とした。 僕の目に飛び込んできたのはゴミだけだった。この時の衝撃は今でも鮮明に覚えている。 しばらくして我に返り、ゴミの山をあさってみると、あることがわかってきた。ここには外国からのゴミが流れ着いていたのだ。特に中国、韓国、ロシアからのものが多くを占めている。なぜこんなに外国のゴミが多いのだろうか。連れてきてくれた先生に聞いてみると答えは悲惨なものだった。外国の漁師たちが、漁をしたついでに海にゴミを投げていくのだそうだ。耳を疑いたくなる話だが、これが現実である。 そんな人たちに漁師をやる資格があるのか、怒りが込み上げた。 学校へ戻ってからも、ゴミのことが頭から離れなかった。考えてみると、この数年でペットボトルのリサイクルが始まったし、僕の通う中学校では古紙回収もしている。それに、全校生徒と先生方で近隣のゴミ拾いもしている。学校のそばにある夕日が丘には毎年多くのライダーやカップルが集まるのだが、彼らはこの景色を素晴らしいと言いながらも、ゴミを辺りに捨てていく。せっかく拾っても、捨てる人がいる。これではいつまでたっても現状は変わらないままだ。 岸壁を越え、目にしたゴミによって、自分たちとゴミがどれだけ密接な関係にあったかを再確認することができた。と同時に身近な所で環境問題が起きていることに気づくことができた。 海外からの漂着ゴミの問題も、訪れた人が捨てていくゴミの問題も、僕個人の力では解決することができない。でも、自分たちの暮らす地域がこれ以上汚されていくのを見過ごしたくはない。 何かできることはないのだろうか。間接的にでも関わることができるのではないだろうか。例えば、これまで以上に地域清掃の回数を増やせないか学校に提案したり、ポイ捨てを未然に防ぐためのポスターや看板の設置やゴミ箱の設置などを市にかけあうことならできそうだ。 それは小さな一歩かもしれない。でも、そうやって僕達が訴えていくことで、一人でも多くの人がゴミ問題について考えてくれたらいい。長い時間が必要かもしれないが、厚田を越え、石狩を越え、日本、そして世界へとゴミ問題を解決するための活動が広がっていき、いつかみんながキレイな地球で、笑顔で暮らすことができれば…。そんな未来をこの手で、その手で、作れる日が来ることを信じている。 |