檜山支庁地区 せたな町立北檜山中学校 3年
浅沼 琢透あさぬま たくと

題 『愛泉寮で学んだこと』


  51パーセント。この数値は僕が住んでいるせたな町の人口の、お年寄りがしめる割合です。町民の半分が65歳以上のお年寄りだということを知り、僕は初めて新聞やテレビなどで報道されている「高齢化社会」というものを身近に感じました。
  日本は他の先進国に比べて、速いペースで高齢化が進んでいると言われています。とは言っても、普段の僕の生活の中でほとんどそれを実感するような場面はありませんでした。しいて言えば、病院へ行った時に「お年寄りばっかりだなぁ」と感じたことぐらいでしょうか。僕の意識はその程度のものでした。
  そんな僕がひょんなことから青少年体験活動推進事業「道南ジュニアリーダーコース」に参加することになったのは去年のことです。観光・防災・福祉・子育ての4つの体験コースの中で、僕が選択することになったのは福祉コース。函館市にある特別養護老人ホーム『愛泉寮』を訪問し、介護体験をすることになったのです。
  愛泉寮を訪問した僕達は、お年寄りの車椅子を押したり、一緒に昼食を食べたり、おしゃべりの相手をしたりしました。車椅子を押すのは僕が思っていたよりずっと大変で、思った方向に進んでくれず壁や物にぶつかるのではないかと思いヒヤヒヤしました。昼食の時、僕は全くといっていいほど無力でした。うまく手に力がはいらず、特別なフォークやスプーンで食事しているお年寄りのみなさんを見ていることしかできませんでした。それでも、僕達のグループのお年寄りのみなさんは初対面にも関わらず、僕達にとても温かく接してくれて、孫の事や昔の事などたくさん話してくれました。
  ちょうどその日は、あるおばあさんの101歳の誕生日の日でもありました。僕達はそのおばあさんが大好きな北島三郎さんの「与作」をお祝いに歌いました。ほとんど会話などできないおばあさんが拍手して喜んでくれたことがとても印象に残っています。介護をする方はこういう瞬間が一番うれしくなるのだそうです。
  高齢者の占める割合はこれからますます高くなっていきます。その一方で若い人の占める割合の低い「少子高齢化社会」に拍車がかかってくることでしょう。少子化・高齢化と聞いたら、僕達はどうしてもマイナスのことばかり考えがちです。でも、それは決して目を背けていられる問題でもありません。だからこそ、僕達若者が、目を逸らさずにきちんと向き合っていかなければならないと思います。
  でも、僕は一人では何もできそうにありません。もし、介護体験の時にお年寄りに接するのが僕、一人だったらどうだったでしょうか。きっと話しかけることもできなかったと思います。それができたのは一緒に参加した仲間、チームがあったからだと思います。だから、僕達の町にもチームをつくることはできないでしょうか。介護や助け合い、ふれ合いを通じて人と人の結びつきを強めることはそれほど難しくないと思います。
  僕の住んでいる町は三つの区に分かれていますが、それぞれに久遠大学・いきがい学園・寿大学とお年寄りが共に学ぶことのできる環境が整っています。また、養護老人ホームも三区にそれぞれあります。さらには、老人クラブなども多数あり、僕のまわりでもたくさんのチームが存在していることが分かりました。そのチームをお年寄りだけの限られた集団ではなく、様々な年齢層の人々がふれ合っていけるような環境づくりが必要だと思います。祖父母と一緒に暮らしている僕にはそれが口でいうほど簡単なことではないということは分かっています。しかし、より豊かな社会を築いていくためには、お互いにゆずり合い、助け合っていくことがとても大切です。僕の学校でも老人ホーム訪問の時間などふれあうチャンスは近くにあると思います。近所のお年寄りとあいさつを交わす。それだけでもいいでしょう。そんな近くのチャンスから僕は生かしていきたいです。