多くの人と接し、子どもの社会性を育む

− 平成27年度 青少年育成運動活性化研究協議会開催 −
 
  11月13日に札幌市のかでる2・7において、 平成27年度青少年育成運動活性化研究協議会を開催しました。

  本研究協議会は、道内各地における青少年の育成運動に取り組んでいる関係者や ボランティアの方々を対象に、運動の現状や課題、今後の進め方について共通理解を深め、 それぞれの地域における今後の青少年育成運動の活性化を図るため開催しています。
  当日は、開会式、基調講演の後、3つの分科会での研究協議を行い、 今後の活動の推進に役立てました。

  開会式には、主催者として、当協会の佐々木会長、山谷副会長が出席するとともに、 来賓には、北海道から佐藤環境生活部くらし安全局長に御出席いただきました。

  基調講演は、北海道教育大学教職大学院准教授の 龍島 秀広 氏を迎え「非行から見える現在の子どもたち」 と題し、お話していただきました。

  龍島先生のご講演の要旨は、次のとおりです。

  子どもたちの三つの変化

  @ 子どもの非行が激減  A 不登校の高止まり  B 心の病気の増加(摂食障害等)


  戦後最低レベルの少年犯罪

  報道では、子どもが殺人事件を多数起こしている感じがするが、実際は戦後最低の件数。 報道する材料が減っているため、ちょっとした事件でも全国報道されてしまう。
  少年犯罪のピークは、戦後の昭和25年から平成24年までの約60年間に4回ピークがある。 ピークの時代では、中学・高校でクラスに1人は刑法犯として捕まっていたが、今は1つの中学校で 1年間に1人捕まる子どもがいるかという状況である。

  戦後最高の非行率の子ども達、大人になったら犯罪率は戦後最低
−大人になって落ち着く理由、健全育成活動の成果−
  少年時代に戦後最高の非行率を記録した年齢層の子ども達が20歳を超えて大人になると、その年齢層が戦後、 最低の犯罪率になっている。これは、中学校時代にたくさん注意され、手を掛け、手厚く育てていた 子どもは、大人になると落ち着いたものと考えられる。

−非行が多いのは、中学生から高校1年生−
  日本の子どもは、中学校から高校1年生にかけてが1番非行が多く、その後、落ち着いており、 非行の低年齢化とよく言われているが、実際は低年齢化していない。

  非行減少の要因
− その1 生活が豊かになった−
  昔は、貧困で生活やお金に困り、窃盗や強盗などの少年非行が多かったが、 今はそのような事件などは少なく、生活が豊かになったことが、非行の減少に寄与している。

− その2 画一的・支配的な価値観の押し付けが弱くなった−
  よい学校−よい仕事−良い生活、という価値観の押し付けが弱くなった。学校や世の中でも、 この価値観の押し付けが無くなってきていて、価値観として機能しなくなっている。
  また、「俺はどうせ勉強できないのだから。」と言って反発する子どもが反発できなくなっており、 自分が戦うべき価値観がなくなってしまった。

− その3 非行少年との接触が減り悪いことを教えてもらえなくなった−
  少子化や異年齢の子どもたちの外遊びの減少、テレビゲーム、インターネット、携帯の普及により、 人と人との接触する機会が減少している。逆に、このことが、地域の非行集団と接触することが減り、 非行=悪いことを教えてもらえることもなくなっている。

  現代の子どもたち“反社会的な子ども”から
             “非社会的な子ども”への変化

  非行が減り、不登校が増える傾向が見えており、子どもが“反社会的”から今は“非社会的”な 子どもに変わってきている。“非社会的”というのは、社会化が遅れている。あるいは、社会化していない、 大人になっていない、社会的な成長が遅れている子どもである。そういう子どもは、相手が可哀想だとか 限度のわきまえがなく、ブレーキが効かないため、ついやり過ぎてしまい、最近の事件のようなことになる。

子どもの育ちのバランスが崩れている
  子どもを、身・知(身体、知識、学力)と、情・意(感情、情緒、意志)の二つに分けたとき、 子どもの身・知は、年齢相応に発達しているが、情・意識についての、情緒表現が豊か、他人の気持ちがよく分かる 、自分をコントロールできるというのは、実年齢からマイナス5歳〜10歳ぐらいなのではと感じている。
  例えば、中学・高校ぐらいの15歳だと、身体は立派に育っているが、精神年齢は、5歳〜10歳ぐらいで、 人の気持ちが分からなく自分をコントロール出来なく、事件を起こしてしまうなどが起こりえる。

  最後に龍島先生は、「子どもの社会性が育っていない。そのための、きちんと社会性を 育てていかなければならない。1つは、物もお金もある時代で、子どもを我が儘に育てないためにも、 子どもに我慢させなければならない。その変化にどのように対応するかということが非常に大きな問題。 もう一つは、子どもが育つ過程で、多くの人と接触する機会を工夫して増やすこと。 今、学校で社会性を育てる教育をしようとしているが、育ってから身に付けさせるのは難しい。 これは、やはりそういう機会を大人がつくる、地域がつくることだと思う。」 というメッセージを贈り、講演を締めくくりました。

  午後からは3つの分科会に分かれ、それぞれのテーマにそった事例・話題発表があり、 その後、各分科会ともグループに分かれ、活発な協議が行われました。
  グループ討議では、地域での活動の成果や課題等が話され、他の地域で活動している方々にとっては 共感できる部分や新鮮な情報があったりと、今後の育成運動を進める上で貴重な機会となりました。






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