![]() ![]() 十勝地区 帯広市立清川中学校 3年 題 『夢への約束』 |
以前、妊娠している女性が出血を伴う腹痛を訴え、救急車で産婦人科へ行こうとしたが、 10カ所以上の病院から断られ、たらいまわしにされているうちに、 流産してしまった事件があった。今、産科医や助産師の不足が大きな問題となっている。 この世の中に無駄な命なんて一つもない。本当は助かるはずの命が、 助けられないなんて。私は悔しさと怒りを感じた。 私は、生まれてから長い間一人っ子だった。周りの友達が、 兄弟と楽しそうに過ごしている姿を、ずっとうらやましく思っていた。 5年生になったある日、母から「くるみ、やっと兄弟ができるよ。」と言われたが、 最初は兄弟ができる喜びより、戸惑いの気持ちが大きかった。 しかし、母の検診について行き、超音波エコーを見せてもらったとき、 私の気持ちは大きく変化した。黒い画面の中で、白く写る小さな、 小さな手と足が元気に動き、心臓が力強く脈を打っていた。それは、 「元気だよ!早く会いたいよ!」、と言っているかのように感じた。 私の中で「お姉ちゃんになるんだ!」という実感と喜びが、ふくらんでいった。 その時、助産師さんが私に、こんなことを教えてくれた。 「赤ちゃんが生まれてくる確率は、2億分の1しかないんだよ。」この言葉は、 今でも私の心に焼きついて離れない。「命ってすごい!人が生まれてくることって 何て素晴らしいんだろう。」私は、命の誕生について深く感動した。 3月24日、いよいよ対面、感動の日。私は立ち会いを望んだ。 母と一緒に分娩室に入ると、助産師さんがスムーズにお産が進むように、 声をかけ、励ましてくれていた。「もうすぐ会えるからね。お母さん頑張って。」 「くるみちゃん、お母さんの手をにぎっててあげて。その方がお母さんと赤ちゃんが頑張れるから。」 その言葉で私は必死に手を握った。それからも、助産師さんに声をかけられながら長い時間が過ぎた。 「生まれた!」大きな産声をあげて妹が誕生した瞬間、私は歓声を上げた。 「なんて小さいんだろう。なんてかわいいんだろう!」 そおっと生まれたばかりの妹のほっぺたをさわってみると、やわらかく温かかった。 「これがやっと出会えた命のぬくもり。この瞬間にかかわる助産師ってすごい! 私もいつか助産師になりたい。」とこの時、強く感じた。 それからの私は大きく変わった。今まで特別自分の命について考えたことはなかったけれど、 生んでくれたこと、生まれたこと、そして育ててくれたこと一つ一つに例えようもない感謝 を感じている。 調べれば調べるほど、助産師の仕事は、 勤務時間や、仕事内容が、とても過酷な現場である。 すべてがよい出産とは限らず、瞬時の判断も重要である。 しかし、それを知った上で私は助産師になりたいと思っている。 なぜならば、こんなにも誇りある仕事は他にはないからだ。 私は助産師になりたい。母親に寄り添い励まし、支えになる助産師。 そして、「安心して子供を産める世の中」を築いていく一員となりたい。 私は、妹の誕生の時に出会った助産師さんと一つの約束をした。 「私、絶対に助産師になります。」「そう、そうしたら絶対に助産師になって、ここで一緒に働こうね。」 私の夢が決まった。 |