![]() ![]() 空知地区 栗山町立栗山中学校 3年 題 『和のこころ』 |
心清めて拍手打って・・・ 私は、民謡を習っています。民謡は、古き良き日本の文化です。しかし、 残念なことに、民謡について地味などの、良くない印象を持っている人がとても多いのです。 小学五年生の時に、こんなことがありました。転入先の学校で、 自己紹介をした時のことです。“私は民謡を習っています”と胸を張って言いました。 ところが、返ってきた言葉は、“えー、民謡?”“何、それ?”。 大好きな民謡が、学級のみんなに受け入れてもらえなかったのです。心に、 大きな穴が空いたようでした。 さらに追いうちをかけるように、その頃声替わりの真っ只中で、 実力を発揮できない私に対し、一緒に民謡を習っている妹は大会で日本一を獲りました。 もう嫌だ!どんなに努力しても、人は結果しか見てくれない。 学校では、民謡なんかと馬鹿にされる。何故?私の今までの努力はなんだったのだろう。 大切なものを見失いました。 今年で民謡はきっぱりとやめよう、と心に決めた2010年。 思わぬチャンスが舞い込んできました。ロシアで行われる大規模な国際交流会に、 日本代表として参加してみないか、という話でした。良くない事ばかりが続き、 精神的にも限界寸前だったので、一瞬耳を疑いました。 しかし、現実だと気づくと、私の頭の中は、エルミタージュ劇場で唄う自分の姿で 一杯になりました。両親と相談し、ロシア行きを決めました。 いよいよ、明日は劇場公演という日。私の心は、 舞台への期待と不安が複雑にからみ合っていました。ロシアは音楽の国だから、 気に入らない音楽ならば、お客さんはすぐさま帰ってしまう。果たして、 日本語の唄が、ロシアの人々の心に届くだろうか。 そして、迎えた当日。私は心を決めていました。たとえ、途中で 誰かが帰ってしまっても、ただ心を込めて唄おうと。 挨拶代わりの1曲、次の1曲と進めてゆく内、確かな空気の変化を感じました。 驚いて、ゆっくりと周りを見渡すと・・・会場には、たくさんの笑顔が咲いています。 涙がこぼれそうでした。最後まで聴いてもらえないかもしれない。 そんな不安さえあったのに。日本語が分かる人は、ほどんどいないはずなのに。こんなにも、 大きな拍手で応えてもらえるなんて。ああ、そうか!国境も、人権も、何1つ関係ない。 音楽には、言葉さえ必要ないのだ。最後の曲が終わり、 鳴り響いた拍手とブラボーの声が全てを物語ってました。 ステージの後、スパシーバ、スパシーバ、ありがとう、ありがとう、 と涙を流して下さったロシア人のおばあさんは、私の手を握りしめて、おっしゃいました。 こんなにも素晴らしい音楽を生み出した日本という国は、本当にすてきな国ですね、と。 最近、遠い昔から、日本人が築き上げてきた伝統文化を、 よく見もしないで、古いから地味だからと馬鹿にする人達がいます。 もう一度見つめ直して下さい。よく探せば、がらくただと思って捨ててしまったものの中に、 宝物を見つけることができます。日本の文化もその1つです。 それは、かけがえのないものです。真の安らぎと幸せで溢れています。 しかし、少し目を放せば、すぐに見失ってしまうのです。 だからこそ私は、伝統文化の一つである、民謡という宝物を、 世界中の人々と、次の世代へ伝えてゆくために。今日を精一杯生き、 未来へ向かって歩んでゆきます。 |