優秀賞(北海道青少年育成協会長賞)



札幌地区 札幌市立月寒中学校 1年 安田 りなやすだ      

題 『アンケートをきっかけに』

  皆さん、「転校」というものをした事はありますか。あるとすれば何回ぐらいあるでしょう。私は、父の仕事の関係で転校を重ね、 2つの幼稚園と4つの小学校に通いました。
  もちろん大変だった事もたくさんありましたが、その分、私にとってとても良い経験となり、たくさんの事を学びました。 ただ、どこの学校でも経験したのは、「転校生」というレッテルがはられ、偏見をもたれてしまうという事です。 転校をした事がある方なら、感じたことがあるのではないでしょうか。
  このような偏見は、普段の生活の中にもあると思います。人と少し違うだけで、「この人はこうだ」と決めつけたり、 一方にかたよった見方をしてしまうことです。そしてこれが、「いじめ」の原因の一つになっていると私は考えます。 「いじめ」とは、人の弱みにつけこみ、傷つけ、自分の弱さを隠して優越感に浸ろうとする、卑劣な行為です。 私は、「いじめ」に対して「なぜこんなひどい事をするのか」「こんな事をする意味がどこにあるのか」という疑問と、 「いじめ」は絶対に許せないという強い思いをもっています。
  ですが、今ここでは「いじめ」そのものについてではなく、いじめ事件がおこると必ず行われる「いじめアンケート」に ついてみなさんと一緒に考えてみたいと思います。もちろんアンケートにより、今までわからなかった事実が判明することが あるかもしれません。
  しかし、それで全てがわかるのでしょうか。
  例えば、いじめられている立場の人は、自分の思いどれほど正直に書けるでしょう。
 「いじめられている」と書く事は、自分にとって屈辱であり、書いてしまえば大ごとになってしまうかもしれません。 「いじめられていない」と書けば、大きな問題として取り上げられそうになっても、「やはりいじめはなかった」と されてしまいます。一方、「いじめ」を周りで見ている人達の立場ならどうでしょうか。「いじめ」を見て見ぬふりを してきた人達なら、アンケートに対しても真剣に答えず、素直には書けないでしょう。また、アンケートそのものに疑問を 抱いている人もいると思います。そんな状況の中でとるアンケートに、どれほどの意味があるのでしょうか。 私は、突然「いじめ」がおきてから行うアンケートではなく、日頃から「いじめ」につながる、レッテル貼りがなくなるような アンケートが必要だと思います。もしそれができたら、お互いに認め合い、素直になんでも言い合えるような、 仲間づくりにつながっていくのではないでしょうか。
  さらに、私達はこうしたアンケートを、自分を見つめ直す「きっかけ」にできるはずです。アンケートに、 自分の思いを正直に書けなくても、今までの出来事を振り返る、友達の存在を改めて考えてみるなど、 自分の中での「きっかけ」にしていく事が大切だと思います。すると、自分と向き合うことができ、大きな気持ちの変化へと つながっていくのではないでしょうか。
  私が、転校したばかりで不安な時に、声をかけてくれる人がいた事は自分の励みになりましたが、そのことよりも、 朝、登校した時に、隣の席の子がほほえんでくれた、ただそれだけの事がとても嬉しく、「よしがんばってみよう」という 気持ちをもてる、「きっかけ」になりました。笑顔やあいさつなどのちょっとした心遣いが、どれほど大きな気持ちの変化を 生むのかを、私は実感しました。
 「いじめアンケート」も心のもち方ひとつで「きっかけ」にすることができると思います。そして、「いじめ」に つながるような偏見がなくなる、世の中にしていきたいです。
  そのために私は、これまでの貴重な経験を土台に、小さな事を積み重ね成長し、困った時には相談されるような 「心の器」の大きな人になっていきたいと思います。