> 優秀賞(北海道教育委員会教育長賞)



釧路地区 釧路町立富原中学校 3年 山岸 永和やまぎし  と わ 

題 『一歩を踏み出す』

  2011年3月11日に、東北地方に大きな爪痕を残した東日本大震災。 僕の住んでいる釧路でも地震と津波が発生しました。
  当時小学5年生だった僕はテレビで何度も繰り返される家や車が流されていく 悲惨な映像を見て不安や恐怖でいっぱいでした。
  家族で何かできないか考え、すぐにお米と義援金を送りましたが被害の状況や犠牲者の人数が増えていくのを ただ悲しむ日々でした。
  そんな中、2011年5月に父が被災地へボランティアに行きました。 僕も「行きたい」と思いましたが小学生ということもあり断念しました。
  ボランティアから帰ってきた父が、被災地がどんな状況だったのかたくさん話してくれました。 家族や家を一瞬にしてなくしてしまった人達が一生懸命生きている事や、 全国から来た多くのボランティアの人達が東北で頑張っている事等を聞き、 僕も東北の人達の役に立ちたいと強く思うようになりました。
  翌年10月に父が3度目のボランティアに行くことになり中学生になった僕も一緒に ボランティアに参加できることになりました。
  東北の人達の役に立ちたい反面、中学生の自分に何ができるのか。逆に迷惑ばかりかけてしまうのではないか。 そんな思いを抱えながら僕は震災から1年半たった被災地に向かいました。
  実際に現地で被災地全体を見た時、僕は言葉を失いました。 建物の基礎部分だけが残り街が消えてしまっている状態が続いていました。 確かにあの時まで自分達と変わらない生活がここにあったんだと思うと涙が込み上げてきました。 ボランティアで与えられた仕事はどんなことでもしようと思いました。
  ボランティアは岩手県釜石市、陸前高田市での住宅跡地の清掃や海が時化るたびに 海中から打ちあげられるガレキ等を撤去する作業を行いました。また、 津波で多くの犠牲者がでた防災センターや学校の視察を含め3日間で行われました。
  中学生の僕にもできることがたくさんありました。被害の大きさから見たら自分の行った 作業はとても小さなことだったと思いますが被災された方々からたくさんの「ありがとう」 という言葉をかけてもらい少しは役立てたような気がして作業を終えた時は充実し、 とてもうれしい気持ちになりました。
  ボランティア終了後は大槌町役場を視察させてもらいました。 役場の花壇整備をしていた女性が僕たちに笑顔を交えながらこのようなお話しをしてくれました。 「私は3月11日に命をもらいました。遠い釧路からここに来てくれるだけでも私は嬉しいんです。 それは、私たちの事を忘れていないんだと思えるからです。皆さんは命を大切にしてくださいね。 ありがとうございます。」僕はこのお話を聞き、被災された方々の心は震災から 1年半たった今も不安や悲しみでいっぱいなんだと思いました。
  自分の行った作業はとてもちっぽけなことだったと思いますが、 このとき初めてボランティアは東北に行くことだけでも、被災者の心の支援につながるんだと思いました。
  そして何よりボランティアに参加することで行動することの大切さ、 たくさんの人との縁の結びつきなど色々な事を学び自分自身の成長につながりました。
  皆さんはどうでしょうか。友人のため、家族のために行動できているでしょうか。 「誰かのために手を差しのべる」ということは大切だとわかっているものの、 なかなか行動できないものです。でも、心で思っているだけでは行動しないのと同じです。 行動をすることで目の前に広がる世界が変わります。
  みなさんも勇気をもってその一歩を踏み出してみませんか。