優秀賞(北海道青少年育成協会長賞)



十勝地区 帯広市立帯広第五中学校 2年 深町 陽奈ふかまち   はるな 

題 『うっとうしくていとおしい』

  兄弟って面倒くさい。口答えするし、すぐ泣くし、うるさいし・・・そのくせ、 「お姉ちゃん、お姉ちゃん」とまとわりついてくるのだ。
  そして、何をやっても叱られるのは私。妹が泣けば、「何かしたのか!」と言われ、 弟が泣けば「8歳も下なんだから!」と言われる。二人が散らかしたおもちゃの片づけも、 二人のけんかの仲直りも、全て私の仕事となる。 「お姉ちゃんなんだから・・・」という言葉はもううんざりだ。長女なんて嫌だ。
  中学生になり、学校・塾・バレエと忙しい毎日の中で、こういうイライラが大きくなってきた。 先日、大切なネックレスを壊されてしまい、思い切りどなってしまった。 また、あるときは、「お姉ちゃん」の立場を利用して、難しい言葉を並べ、口でやりこめてしまった。 やりすぎたと反省している矢先に、「何したんだ!」と父からの厳しい言葉、 「陽奈はしっかりしてるから、つい大人と同じこと、やらせちゃうんだよね。」と母が続く。 「私はそんなに強くないし、しっかりなんかしてない。そうさせてるのはそっちでしょ!」と心の中の私が叫ぶ。 弟も、妹も、父も、母も、みんなうっとうしい。
  でも、そのたびにふと考える。私は家族が好きなのに・・・。 これが反抗期?自分でもわけがわからなくなる。心がギューっとしめつけられる。自分が嫌になる。 「お姉ちゃ〜ん。」と言って抱っこしてくる弟のむにゅとしたやわらかさはたまらなくかわいい。 寝顔もかわいい。いたずらをしたときに「鬼を呼ぶよ」と言うと「待って!待って!」と慌てる姿もかわいい。 妹は「告白するなら口で言いなさい!」と姉のようにアドバイスしてくれるなど、なかなか頼もしい。 また、私が友達とけんかしておちこんでいるときには「お姉ちゃん大丈夫?ちゃんと仲直りしてね。」 となぐさめてくれることもあった。
  父は、疲れていても、バレエの送り迎えをしてくれる。 キャンプに行ったときは釣りを教えてくれる。厳しいけど、父のにおいはなぜかほっとする。
  母は、週に1回は私と二人だけの時間をつくってくれる。 弟や妹にいつもかかりっきりになってしまうことを気にかけてくれているのだと思う。 そして、セラピストのように私の話をじっくりと聞いてくれる。 今の私でいいのかと悩んでいたとき「悩むのもいいんだよ」と言ってくれた。あの言葉と笑顔に救わた。
  あんなにうっとうしい家族なのに、私はこんな家族が好きだ。 家族みんなでたき火を囲み、ホットミルクを飲みながらワイワイ話したキャンプの夜。 両親の寝顔にみんなが集まってごろごろする休日。部屋で勉強しているとき、 リビングから聞こえてくる父の声、母の声、妹の声、弟の声・・・。耳にほんわかと心地いい。 今、このようにふりかえってみると全てがいとおしい。
  家族というのは、こういうものなのかもしれない。うっとうしくて、面倒くさくて、 うるさくて、やっかい。でも、あったかくて、大好きで、いとおしい。
  この5人でよかった。このメンバーなら大丈夫。生まれ変わってもまた家族になろうね。