最優秀賞(北海道知事賞)



札幌地区 北海道教育大学付属札幌中学校 3年  前 田  ほの香まえだ ほのか

題 『「障害」と共に暮らす社会』

  私には、ダウン症の弟がいます。健常者に比べて発達が遅く、今は小学4年生ですが足し算や引き算を 勉強しています。弟がいることで私は世の中にあるいろいろな障害や病気を知りました。そして、障害の ある方々やその家族など、たくさんの人と関わってきました。「障害」による生きづらさや、苦労も見え てきました。その一方で、障害がある方々と一緒に遊んだり、何かをつくったりすることの楽しさも知り ました。その一つ一つが私にとってとてもいい経験です。
  さて、みなさんは「出生前診断」を知っていますか。お腹の中の赤ちゃんが生まれてくる前に、ダウ ン症などの染色体異常があるかわかるというものです。6月29日の朝日新聞の記事によると、2013年4月か ら2015年3月までに1万7,800人が出生前診断を受診し、230人が胎児に異常があると確定、そのうちの221人 が中絶をしたそうです。異常が確定した人を40人のクラスにたとえると、そのうち約38人が中絶したことに なります。しかし、私は障害があるからという理由で命を捨ててほしくはないと思います。なぜ「障害」 というだけで中絶する人が絶えないのでしょうか。私は「世の中の障害に対してのイメージに問題がある のではないか」と思います。私は通学に電車を利用していますが、時折、電車の中で障害のある方を見か けます。中には、隣に座っている人にいきなり話しかけたり、一人で何かを話している人もいます。その 時、周りにいる人を見ていると、冷たい目でその障害のある方を見ていたり、数名でなにかこそこそと話 をし始めたり、だんだんとその方から離れていったりすることがあります。「自分たちとは違う人」、 「よくわからないから関わりたくない」そんな思いがありませんか。その思いが、障害のある方やその 家族が生きづらいと感じる原因の一つになるのではないでしょうか。
  私は障害のある弟と関わっていく中で、たくさんのことを学び、その学びは私をいい方向へ変えてくれ ました。将来の夢もその一つです。私の将来の夢は医者になることです。母と、弟が生まれた時の話をした ことがあります。母は
 「ダウン症だってわかった時は、やっぱりショックだったよ。」
と言っていました。障害のある子を産んだお母さん方やその家族はやはりショックを受けるでしょう。その 時、私が障害者と共に暮らしてきた一人として、医者として、お母さん方のそばにいてその良さを話したり、 相談にのるなどしてショックを軽減してあげたい。これからの生活に希望を持たせてあげたい。そう思います。 また、その子本人とも向き合い、毎日を楽しく過ごせるようサポートしていきたいです。障害のある弟がい なければ、こうした夢を持つこともなかったでしょう。障害のある弟がいてよかったと心から思います。 また、私の兄弟として生まれてきてくれた弟、そして産んでくれた両親に本当に感謝しています。
  私は弟のことが大好きです。友だちにダウン症の弟がいることを隠そうと思ったことは一度もありません。 私は家族に障害者を持つ一人として、みなさんに障害についてもっと知ってもらいたいです。そして、電車 で障害のある方から話しかけられた時には話をしたり、乗り降りに困っていたら手伝うなど、たくさん関わ ってほしいです。そうして少しずつ関わっていけばきっと、障害についての見方や考え方が変わると思います。 みなさん一人一人のイメージが少しずつ変わっていけば、少しずつ障害がある方々も過ごしやすい社会になって いきます。障害がある方々も過ごしやすい社会をつくるということは、たくさんの人が互いに関わり、助け合 うことになるので、社会全体にもいい影響を与え、みんなが過ごしやすい社会をつくることにつながります。
  何事も、まずは知ることから。私はこれからもより多くの人に障害を知ってもらえるように、私の体験を 多くの人に話していきたいです。これが、みんなが過ごしやすい社会をつくるために私ができることであり、 私にしかできないことだと思います。