最優秀賞(北海道知事賞)



釧路地区 白糠町立庶路中学校 3年  松 橋  愛 美 まつはし  あ み 

題 『配慮の権利』

  みなさんには、どうしても苦手なことや、できないことがありますか。
  私は、全ての人間一人一人に、自分の苦手なことを他人に理解してもらい、 必要に応じて助けてもらう権利があると思います。
  私は、三歳の時に広汎性発達障がいと診断されました。幸いごく軽度のものでしたが、 苦手なことはたくさんあります。
  例えば、頭の中で物事を整理することが苦手で、人との会話が上手くできません。 感情をコントロールするのも苦手で、些細なことで泣いたり怒ったりしてしまいます。 また、食べ物の匂いや食感に過敏で、少しでも違和感があると食べることができません。 私は、これらの苦手なことのせいで、たくさんの人に迷惑をかけたり、自分自身が苦しい思いをしてきました。
  私は、小学校一年生から中学校一年生まで特別支援学級に所属していました。 そこでは苦手なことに配慮してもらえたり、問題が起こったときに適切な対応をしてもらえたりしました。 その結果、中学生になる頃には発達障がいで困ることはほとんどなくなり、 二年生から普通学級に入ることになりました。
  私はとても喜びましたが、同時に不安にもなりました。 自分が今まで困らずに過ごせたのは、症状が軽くなったからではなく、 周りの先生方が私の発達障がいに気を遣ってくれていたからではないかと思ったからです。 もし本当にそうなのであれば、配慮をしてもらえなくなったら困ります。私は、少しずつ怖くなっていきました。
  二年生に進級する前に、母と先生方との話し合いが行われ、母が私の思いを話したそうです。 すると先生は、「特別支援学級や発達障がいに関係なく、生徒一人一人に合った配慮をしていきますので、 心配ありません。」と言ったそうです。
  私はそれを聞いて、とても安心しました。「障がい」があるから配慮するのではなく、 全ての生徒一人一人にきちんと配慮してくれる、とてもいい学校だと心から思いました。
  私は現在、普通学級に所属していますが、何の困り事もなく、 楽しい学校生活を送ることができています。先生方の配慮も以前と変わらず、本当によかったです。
  さて、皆さんは「障がい者差別解消法」という法律を知っていますか。
  これは今年の四月に施行された法律で、障がい者とそうでない人が共存するために、 障がいを理由とする不当な差別を禁止して、全ての人に無理のない範囲で、 障がい者への合理的な配慮を求めるというものです。
  このような法律もでき、今、世の中は私たち障がい者にとってとても良い方向へ変わってきています。 今こそが、「配慮の権利」について考える絶好の機会ではないのでしょうか。
  もちろん、障がいに関係なく、誰にだって苦手なことやできないことはあります。 そこで、たとえ障がいがなくても苦手ことに配慮しあえるような世の中になっていくべきだと考えます。 皆さんにも私にも、全ての人にその権利はあるのです。
  だから、まずは困った時には人の手を借りる勇気を持ち、困っている人には手を差しのべる 優しさを持ちたいと思います。
  私は、自分と同じように悩んでいる人たちの力になるために、 自分の思いを発信し続けます。小さな事かもしれませんが、 声をあげることで何かが変わると信じています。
  性別、年齢、国籍、障がいのあるなしに関わらず、全ての人が生きやすい世の中。 私は、そんな世の中に変えていきたいです。