優秀賞(北海道PTA連合会会長賞)



日高地区 新ひだか町立静内第三中学校 2年 坂 本 安侑子 さかもと   あゆこ 

題 『私が髪を切った理由』

  ずっと伸ばしてきた髪を、昨年、三十四センチメートル切りました。それは、失恋したからでも、 お洒落のためでもありません。背中まであった髪は、肩より短くなりました。小さい頃からいつもしていた ポニーテールは出来なくなりました。
  私が髪を切ろうと思ったのは、あるテレビ番組を見たことがきっかけでした。 その番組では、病気などで髪の毛が生えなくなってしまった子どもたちに、 ウィッグやカツラを無償で贈る活動をしている人達のことを紹介していました。 ウィッグをもらった小さな女の子は、うれしそうに、やさしく、くしで髪をとかしていました。 その姿を見て、私も思いました。(私も自分の髪を贈りたい!)
  私はまず、この活動について調べてみることにしました。分ったことは一つのウィッグやカツラを作るのに、 約二十人から三十人分の、さらに三十一センチメートル以上の髪の毛が必要だということ。 そして、ウィッグを必要としている十八歳以下の子どもたちが、まだ百人以上いるということでした。
  私は、髪があるのは当たり前だと思っていました。けれど、当たり前ではないことに気づきました。 例えば、病気で髪が生えなくなり、自慢の髪がなくなってしまった女の子が番組で紹介されていました。 人工毛のウィッグだと目立ってしまうので、人毛のウィッグが欲しいと言っていました。 受け取ったのは、欲しかったロングウィッグではないけれど、とてもうれしそうな顔をして笑っていた のが印象に残っています。
  髪がないということは、「前髪切りすぎた」、「髪の毛はねちゃった」という次元の悩みではないのです。
  皆さんは自分の髪が無くなったら…ということを考えたことはあるでしょうか。 きっと、子ども達にとっては大きな悩みなのです。
  すぐにでも、髪を贈ろうとしましたが、身近な所に活動に協賛している美容室がありません。 私は、自宅で髪を測って切らなければなりません。定規で三十一センチメートル測り、 ゴムで六つの束にしばってもらい、一つずつ切ってもらいました。 このように、家族の協力で、無事に髪を贈ることができました。しかし、鏡を見ると、 髪のすそがガタガタになっていました。
  自分で切ると、そうなることは、切る前からわかっていました。しかし、テレビで見た小さな女の子の うれしそうな姿を思い浮かべ、思い切って切ることに決めました。
  その後、髪を受け取ったと、ボランティア団体からお礼の葉書が届きました。その葉書には、 「あなたからの善意は、髪のことで悩みを抱えている誰かの『普通の生活』を取り戻すため、 大切に役立てられます。」と書いてありました。自分の髪がちゃんと人の役に立ったのです。 そのことが嬉しくてたまりませんでした。
  たくさん人の思いがつまって、一つのウィッグやカツラは出来ています。 自分の髪もその中に入っていると思うと、とても誇りに思います。
  切ってから約一年がたち、髪もしばれるようになりました。今は番組の女の子が欲しがっていた ロングウィッグを作れる長さを目指しています。そのためには五十一センチメートル以上の長さが必要です。 今はまだ十八センチメートルです。あと三、四年はかかるでしょう。時間がかかっても、 髪がガタガタになっても、これが私のボランティアです。
  ボランティアとは、特別なことをすることではありません。その人が、その人の生活の中で、 できることをやれば良いのです。だから、誰にだってできます。これからも、 私にできるこのボランティアを続けていきます。