貧困対策は「地域づくり」と「人との繋がり」

-平成29年度北海道青少年育成大会開催-
 
  当協会と北海道、(独法)国立青少年教育振興機構の共催により、 平成29年度北海道青少年育成大会(「少年の主張」全道大会)を、 9月8日に札幌市のかでるホールで開催しました。
  会場には、全道各地から約400名を超える青少年育成関係者が出席しました。

  大会では、北海道社会貢献賞表彰式、北海道青少年基金事業顕彰表彰式、 さらに、道内中学生の各地区代表による「少年の主張」全道大会や基調講演を行いました。

北海道社会貢献賞
北海道青少年基金事業顕彰の贈呈


  長年にわたり青少年の健全育成活動に献身的に尽力された14名(うち4名欠席)の方々に対し、 その業績をたたえ、北海道の小玉環境生活部長から北海道社会貢献賞が贈られました。
  また、社会参加活動等に積極的に取組み、地域の文化・福祉等の向上に貢献し、 他の模範となっている青少年(団体、個人)の功績をたたえ、北海道青少年基金事業顕彰として、 特定非営利活動法人 函館市青年サークル協議会(団体/函館市)に、 当協会の伊藤会長から表彰状と記念品が贈られました。
  その後、北海道議会の志賀谷環境生活委員長から来賓を代表して、ご祝辞を賜りました。
  受賞者の方々は、日々の活動を思い起こしながら、これからの活動に決意を新たにしていました。

「少年の主張」全道大会

  本大会は、1979年(昭和54年)の国際児童年を記念して始まり、今回で39回目となります。
  今年度は、道内中学校349校から3万8千人を超える応募があり、その中から各(総合)振興局地区大会を経て、 見事に代表として選ばれた中学生16人(うち1名欠席)が緊張しながらも、地区代表としての誇りを胸に自分の思いを 力強く堂々と発表しました。

  審査(審査委員長:北海道中学校長会幹事 鎌田 氏)の結果、 最優秀賞(北海道知事賞)には、釧路地区代表の阿部はるかさん(白糠町立白糠中学校3年)が 受賞しました。

  入賞結果・発表者詳細はこちら

基調講演
演題「1ミリでも進める、子どもの貧困対策」
講師 社会活動家・法政大学教授 湯浅 誠 氏


  “子どもの貧困は、周りの人には見えにくいもの”
  最近、新聞などで「子どもの7人に1人が貧困」と報道されていますが、 この数字に対しての感想を尋ねると、多くの人は「本当なの?」とか「実感がない」と答えます。
  7人に1人と言っている貧困というのは、明日餓死してしまうみたいな貧困とは違います。 子どもの貧困問題は、周囲の人には見えにくいものだということを示しているもので、 この問題を考えるにあたってのポイントの1つだと思っています。

  “貧困とは、貧乏プラス孤立”
  子どもも大人も同じですが、貧困はお金が無いだけの問題ではなく、これに繋がりが無いこと、 自信が無いこと、この3つが絡んでしまう状態であって、お金が無いと一番先に悪い影響が出てくるのが、 「繋がり」だと言われています。
  例えば、金銭的に厳しい高齢者が香典を工面できずお葬式に行けなくなるなどして、 徐々に親戚付き合いや地域付き合いが疎遠となってしまうケースや、 修学旅行に行けない子どもが、クラスの友だちの輪から外れていくケースもあります。
  貧困とは、貧乏で且つ周囲との関係・繋がりが無い孤立した状態なので、皆さんが行っている いろんな地域の人達との繋がりや子ども達同士の繋がりを作っていく様々な地域活動が、直接または間接的な 貧困対策になっていると私は思います。


  “貧困対策は、地域づくり”
  私は、地域での様々な活動に参加することが大切だと思います。 例えば、全国各地に「子ども食堂」がありますが、このうち8割は、貧困の子だけではなく 地域に住む子ども全員と大人が集まる場所となっていて、いわば地域づくりの拠点となっています。 地域の子どもも大人もいろいろな人が集まる、いわば「ごちゃ混ぜの空間」で、 子どもが多様な価値観に触れたり、人生の選択肢を増やしていくことが大切だと私は考えていて、 このような場所が増えればいいなと思っています。

  “子どもの健全育成には、体験・時間・トラブル対応が重要”
  私は、子どもの健全育成には4つのものが必要と考えています。
 1つ目は『お金・食事・最低限の学力等』。2つ目は『体験』。3つ目は『時間』。 4つ目は『トラブル対応』。この中で重要なのは、『体験』と『時間』と『トラブル対応』です。
『体験』は、いろいろな人たちが集まり、様々な体験をすることで、人生の価値観を広げ、 人生の選択肢を増やすことができます。
『時間』では、自分に耳を傾けてくれる人がいるということ。
  最後に『トラブル対応』というのは、熱が出たら症状に応じて、寝かす、病院へ行く、 救急車を呼ぶなど家庭の人が普段やっていることですが、そうではない家庭の子どもの場合、 どう対処するんだということですね。

  “気づく力、適切な支援に繋ぐ力”
  大事なことは、貧困家庭の子ども1人ひとりに対応することだけではなくて、地域のいろんな子が いろんな体験を積めるような地域づくりをしていくことだと思います。<Br> その中で、何かに気づくことがあったら、適切な対応をとること。例えば、身体に痣があるなど、 気づく力が大事で、あとは1人で解決までするのは大変なので、行政や専門家など適切な支援に 繋げる力が必要です。
  地域の子どもにいろんな体験を提供しながら、何かあった時には、対応しようという心構えを持つことが、 子どもの貧困問題を少しずつ進めていく対策となると思います。